日本・チュニジア外交樹立70周年の節目に寄せて
日本・チュニジア外交樹立70周年の節目に寄せて

2026年、日本とチュニジアは外交関係樹立70周年という記念すべき年を迎えています。この節目の年に、駐チュニジア日本国大使として皆様に改めてメッセージをお届けできることを大変光栄に思います。
私は、2025年12月にチュニジアに着任いたしました。 着任後まもなく、人生初となるラマダン(断食月)を経験しました。日没後に家族や友人が集い、温かな雰囲気の中でイフタール(断食明けの食事)を共にする文化に触れ、チュニジアの人々の絆の深さと、家族や友人のみならず、他者をもてなす温かい寛大(カラム)の精神に深く感銘を受けました。私なりに少々断食に挑戦してみて、日々の糧への感謝の念、自己を律することの厳しさと、それによって得られる精神的・肉体的な豊かさと落ち着きをほんの少しですが学びました。
その後、3月27日にサイード大統領閣下に信任状を捧呈し、チュニジアにおける日本国大使としての任務を正式に始動しました。 これまで国内24の地域のうち、既に23の地域を訪問しました。各地の遺跡や博物館も訪れる中で、古代から続くチュニジアの歴史を実感し、それぞれの地域ごとに異なる豊かな自然や食事、独自の文化を「五感」で感じ、学びました。チュニジアの厳しい夏の暑さには少々驚かされましたが、それをも包み込むこの国の力強い生命力に魅了されています。 着任以来、日本とチュニジア両国の協力関係が多面的かつ強固であることを示す現場を、数多く視察してきました。これは、今日までに揺るぎない協力の礎を築いてくださった両国の先人、そして今いる関係者の皆様のたゆまぬ努力と友情の賜物と受け止めております。 いくつか例を挙げると、経済・開発協力の分野では、6月、南部地域の水不足緩和に大きく貢献する、円借款で建設されたスファックス海水淡水化施設の完工式に農業・水資源・漁業大臣とともに出席しました。 気候変動対策やエネルギー移行を視野に入れたチュニジアの政策に対し、二国間クレジット制度(JCM)の枠組を活用して日本企業が力強く貢献している現場も訪問しました。 これらの取組を通じて、両国のパートナーシップが今後の地球規模課題の解決を見据えたものであることを実感したところです。 他にも、日本企業の高い技術力が十二分に活用されているラデスCガス・コンバインド・サイクル発電所をはじめとする数々のプロジェクトの現場を視察し、日本の最先端の技術がチュニジアのインフラの根幹を支え、長年にわたる協力の積み重ねが人々の暮らしに広く、深く行きわたっていることを目の当たりにしました。 草の根の現場では、地域社会に深く溶け込み、住民と共に汗を流してさまざまな課題に立ち向かうJICA海外協力隊員の真摯な活動や、チュニジア環境省が実施したごみ拾いイベント「ブルー・サンタ」において、海をきれいにしたいと集まった幅広い世代のチュニジア人の熱意に心を動かされました。 経済関係においても大きな進展がありました。両国間の投資を促進することが期待される二国間投資協定が、本年4月に実質合意に至ったことは、今後の二国間経済関係における一里塚であり、早期の署名・発効が待ち望まれます。 また、チュニジアに進出している日本企業の工場等を視察した際には、そこで活躍するチュニジア人の自信と熱意に溢れる姿に頼もしさを感じました。
両国を結ぶ人と文化の交流も活発です。 特に本年6月、サッカーワールドカップの舞台において、日本とチュニジアの両代表がピッチの上で正々堂々とわたりあったことは記憶に新しく、自分も含め両国民が熱狂し、互いの健闘を称え合った姿は、スポーツがもたらす国境を越えた絆の強さを改めて実感させられるものでした。 また、チュニジア・日本友好協会をはじめとする各団体の皆様の日頃のご尽力に心からの敬意を表します。同協会の長年にわたる功績を認められ、本年の外務大臣表彰の受賞が決定したことは大変喜ばしいニュースでした。また、チュニジア剣道リーグの皆様の市民に根ざした活動も印象深く、3月30日に開催した天皇誕生日レセプションにおいては、凛とした演武をご披露いただき、会場の参加者を大いに魅了していただきました。
2022年にチュニジアで開催されたTICAD8(第8回アフリカ開発会議)は、日・チュニジア関係、そして日本とアフリカ全体のパートナーシップにおいて重要な意味を持つ画期となりました。その成果を踏まえて2025年8月に横浜で開催されたTICAD9にはザアフラニ首相が出席され、日本とチュニジア、そしてアフリカ全体との間の協力の推進が再確認されました。ここ数年で得られたこうした推進力を活かして、両国の友好協力関係を様々な分野でさらに発展させていくために私どもは努力を惜しみません。多くのチュニジア人に日本と日本人の魅力、文化、技術などに関心と好感を持っていただけるよう、積極的に情報発信に努め、チュニジアの皆さまとの相互理解と絆を深めるための交流事業にも注力してまいります。
今から70年前の1950年代、日本は戦後の困難から立ち上がるため、国内の復興と国際社会への復帰に必死に取り組んでいました。チュニジアも、1956年に独立を果たし、新たな国造りに向けて力強く歩みを進めていました。このように、両国がそれぞれ懸命に未来を切り拓こうとしていたこの激動の時代に、二国間の外交関係が樹立されました。 特に、外交関係が始まった1956年は、日本とチュニジアの双方が国際連合への加盟を果たし、国際社会の責任ある一員として新たな一歩を踏み出した記念すべき年です。まさにその出発点において手を携え、外交関係の歩みを始めたことは歴史的な巡り合わせであり、記念碑的な出来事です。
こうした交流の集大成となる70周年祝賀行事として、10月30日から11月1日までの間、チュニス市内で「ジャパン・フェスティバル」を開催します。多くのチュニジアの皆様に日本の伝統と現代の魅力に触れていただき、大人から子どもまで、我々の心の距離がさらに縮まる機会となることを願っております。
日本とチュニジアがともに歩んできたこの70年間は、敬意、信頼、そして「カラム(寛大さ・温かいおもてなし)」の精神に裏打ちされた強固な友情の歴史でした。 この70周年という大きな節目を機に、私たちはこれまでの素晴らしい歩みを振り返ると同時に、71年目、そしてその先の未来に向けて、二国間の友好関係をさらに高い次元へと引き上げる新たなスタートラインに立っています。 将来の世代に向け、ビジネス、文化、市民間の交流などあらゆる分野において、絆をさらに深め、強固なものにしていくため、日本大使館はチュニジアの皆様と一丸となって歩んでまいります。 引き続き、皆様の温かいご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
2026年10月
駐チュニジア日本国特命全権大使
齊藤 純